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2008年06月22日(日)

乗りつぶしとはすなわちスポーツである [鉄な話題]

鉄道趣味のひとつである「乗りつぶし」(完乗)とは,己の定めたルールに則り,特定の交通機関をひたすら乗っていく行為である。乗りつぶし自体は何も鉄道に限ったものではないが,JR全線や全国の民鉄制覇となると非常に難易度が高くやりがいがあることから,もっぱら鉄道愛好者(鉄ちゃん)の間で熱い,ある意味“究極の”趣味だといえる。
さて,日本の大都市圏における鉄道とは,時刻表を見なくともすぐにやって来る定時性の高い公共交通機関という認識が一般的だが,全国津々浦々見渡してみると,分単位で列車が滑り込んでくる路線がすべてでないということがわかる。むしろ全体からみれば,山手線のような運行頻度で走っている路線の方がむしろ特異であり,一日にわずか数往復しか列車の走らない超過疎区間も多々ある。だが,乗りつぶしを志す者にとって,運行本数が少ないから乗らないという“言い訳”が成り立つわけがなく,時刻表を眺めてはいかにして乗車しようかと頭を悩ます毎日である。それ故,完乗を成し遂げるには,複数の路線に効率的にアプローチする計画力や実行力,長時間の列車に乗り続け,ぎらつく夏の日射しや凍てつく冬の寒さにも耐える気力はもちろんのこと,ときにはシビアな乗り継ぎを成功させるための運をも必要とする。ちなわち,乗りつぶしとは,ルールに基づいて知力・体力・精神力の限りを尽くす一種の“スポーツ”なのである。そこで,乗りつぶしerに必要とされる能力について,私なりの見解をまとめてみたい。

綿密な計画力と戦略性
冒頭でも述べたが,過疎地域に行くと「日に何本走っている」と数えた方が早いケースが非常に多い。そのため,無計画に現地へ行くと,列車を数時間(ヘタすると半日近く)待つことにもなりかねない。従って,乗りつぶしを計画している路線のダイヤを調べ上げることは基本中の基本であり,いかに待ち時間を減らしながら確実に乗車していくかを常に考えておかねばならない。また,場合によっては特急や路線バスなどで先回り(ワープと呼ぶ)するといった戦略性も求められる。もちろん,食事やトイレ休憩を考慮しておくことは言うまでもない

高度な分析力と状況判断能力
極めて時間に正確な日本の鉄道であるが,それでも人身事故や天候などによる列車の遅れは少なからず発生する。多頻度で運行されている路線ではそれほど問題にはならないが,ローカル線では一本の列車の遅れが後々の旅程に致命的な影響を与えてしまうことも少なくない。そのため,遅延時には,予定のズレをいかに修復するかを時刻表やアナウンスを見て・聞いてとっさに判断する能力が欠かせない。もっとも,ときには乗りつぶしを断念し,次回以降に見送る勇気も必要となる

運と度胸
時刻表で綿密に調べ上げても,現地に行かないと分からない不確定要素はどうしてもつきまとう。例えば,乗り継ぎ時間が1分の場合,隣のホーム同士の連絡だとまず問題ないが,跨線橋を越えた先に停車している列車に乗り込むとなると,途端に厳しくなる。だが,乗り継ぐ列車がどのホームに停車するかは,事前のリサーチだけではわからないことも多く,その場の運や度胸任せになりがちである。無論,きわどい旅程を避けられるに越したことはないが…

体力と精神力
押し寄せる睡魔をはねのけて予定の場所で間違いなく下車し,トイレがない列車に当たったら水分を取らずにひたすら耐え続け,直角座席のボックスシートに大人4人が腰掛け,足を伸ばすスペースがなくてもひたすらガマンし,逆に何時間続けて立つ羽目になっても弱音を吐かずに忍び続ける体力・精神力は,乗りつぶしerの必須要件である。まだ,美しい車窓が広がっていたり,グループで旅をしていたら気が紛れるのだが,何も見えない都心の地下鉄をひたすら乗りつぶしていく様は,ある意味現代の修行僧とも言えよう(これは飛行機のマイレージを貯める目的のためだけに同じ路線を何往復もするマイル修行に通底するものがある)

…と,思いつつままに書いてみたが,それでも乗りつぶしを続けるテツとは,「そこに山があるから」といって登り続ける登山家と本質的に同じではないだろうか。その山(=路線)を越えた先に,なし得た者にしかみえない新たな展望が拓けてくるのである。あぁなんとスポーツであることよ! 人生の縮図とも言える「乗りつぶし」を,新入社員の社員研修に取り入れることを私は強く提唱したい。

※本エントリは半分ジョークなので,あまり真に受けないよーに(笑)。

Posted by 神海 螢 / コウミ ケイ at 2008年06月22日(日) 22時34分   コメント ( 0 )

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